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顎関節症と歯並びの意外な関係|口が開けにくい・音が鳴る人へ

野村隆之

愛知県豊田市 NICO矯正歯科toyota
日本矯正歯科学会認定医 理事長 野村隆之

DOCTOR PROFILE

 「口を大きく開けようとすると、あごからカクッと音が鳴る」「あくびをする時に、口が引っかかるような感覚がある」——こうした症状に心当たりがありながら、「日常生活に支障がないから」と、そのままにしている方は少なくありません。

 これらは「顎関節症」と呼ばれる状態に見られる代表的な症状です。そして、この顎関節症は、実は歯並びや噛み合わせと密接に関わっていることがあります。

 今回は、顎関節症とはどのような状態なのか、そして歯並びとの意外な関係について、専門医の視点から解説します。

1. そもそも「顎関節症」とはどのような状態か?

 まずは、顎関節症がどのような症状を指すのか、その基本を理解することから始めましょう。

顎関節症は「複数の症状」を含む総称

 顎関節症とは、あごを動かす際の音、口の開けにくさ、あご周辺の痛みなど、顎関節やその周辺の筋肉に関連するさまざまな症状の総称です。一つの原因だけで起こるものではなく、複数の要因が組み合わさって発症すると考えられています。

症状の現れ方には段階がある

 初期には音が鳴る程度であっても、進行すると口の開閉時の痛みや、大きく口を開けられないといった機能的な制限に発展することがあります。

2. 歯並びが顎関節に与える「持続的な負担」

 歯並びや噛み合わせと顎関節症の関連が指摘されるのは、**「噛み合わせのズレによって、顎関節や周辺の筋肉に日常的に偏った負担がかかり続けることがあるから」**です。

 顎関節は、上下の顎の骨をつなぐ関節であり、噛む・話す・あくびをするなど、日常的に非常に多く使われる関節です。噛み合わせにズレがあると、この関節が本来の動きとは異なる負担のかかり方をし続けることになります。

歯並び・噛み合わせに関連して見られやすい顎関節症の特徴

  1. 開閉口時の音(クリック音): 顎関節内にある関節円板という組織の位置がずれることで、口の開閉時にカクッ、コキッといった音が鳴ることがあります。
  2. 口の開けにくさ(開口障害): 指を縦に3本並べた程度が一般的な開口量の目安とされていますが、噛み合わせのズレがあると、この開口量が制限されることがあります。
  3. 左右非対称な開き方: 口を開けた際に、あごが左右どちらかに偏って動く場合、噛み合わせの左右差が関係していることがあります。
  4. 咀嚼筋の疲労感: 食事の際に、あご周辺の筋肉が疲れやすいと感じることがあります。

 なお、顎関節症は噛み合わせだけでなく、食いしばりなどの癖、ストレス、姿勢など、複数の要因が関わって発症することが多いとされています。

3. 専門医が確認する「歯並び由来」かどうかの見極めポイント

 顎関節症の症状があった場合、それが歯並びとどの程度関連しているかを見極めるために、いくつかのポイントを確認します。

噛み合わせのズレの程度

 上下の歯がどのように噛み合っているか、左右差や前後的なズレがないかを詳しく検査します。明らかな噛み合わせのズレがある場合、顎関節への影響が考えられやすくなります。

症状が現れたタイミング

 矯正治療の有無や、歯を失った時期、被せ物を入れた時期など、噛み合わせに変化があったタイミングと症状の出現時期に関連がないかを確認します。

生活習慣・癖の有無

 食いしばりや歯ぎしり、頬杖などの習慣がないかもあわせて確認し、噛み合わせ以外の要因の可能性も含めて総合的に判断します。

4. そのままにしておくと起こりうること

 「音が鳴るだけだから」と症状を軽視してしまうと、将来的に影響が大きくなることがあります。

  • 開口量のさらなる制限: 初期は音だけだった症状が進行し、口を大きく開けることが難しくなる場合があります。
  • 食事や会話への支障: 開口障害が進むと、食事の際に大きく口を開けられない、あくびがしづらいなど、日常生活に影響が出ることがあります。
  • 痛みの発生: 進行すると、あご周辺やこめかみ周辺に痛みを伴うようになることがあります。
  • 顎関節の構造的な変化: 長期間の負担の蓄積により、顎関節そのものの構造に変化が生じる可能性も指摘されています。

5. 症状に気づいたら「3ステップ」で確認を

 「音が鳴るけれど、これくらいなら」と放置せず、段階的に状況を確認していくことをおすすめします。

ステップ1:症状の内容と頻度を記録する

 いつ、どのような時に音が鳴るか、口の開けにくさを感じるかなど、気づいたタイミングでメモをしておくと、専門医への相談時に役立ちます。

ステップ2:他の癖がないかを振り返る

 食いしばりや歯ぎしり、頬杖など、あごに負担をかける習慣がないかを振り返ってみましょう。

ステップ3:矯正歯科での噛み合わせ・顎関節チェック

 私たちは、噛み合わせの状態と顎関節の動きの両方を確認し、症状との関連性を含めてご説明します。

  • 咬合診断: 噛み合わせのズレの有無や程度を確認します。
  • 顎関節の動きの確認: 開閉口時の動きや音、左右差などを詳しく確認します。

6. NICO矯正歯科が提案する顎関節症へのアプローチ

 当院では、顎関節症の症状に対して、歯並びの状況に合わせて適切な対応をご提案しています。

噛み合わせと顎関節、両方を見る視点

 顎関節症は原因が一つとは限らないため、噛み合わせだけに焦点を絞らず、総合的な視点を大切にしています。

  • 噛み合わせのズレを詳しく検査する
  • 顎関節の動きや症状の現れ方を確認する
  • 必要に応じて、専門的な顎関節症治療を行う医療機関とも連携する

 これを行うことで、症状の原因を丁寧に見極めたうえで、無理のない改善方法をご提案しています。

7. まとめ:「音が鳴るだけ」と軽視せず、早めの確認を

 「痛みがないから大丈夫」という判断だけで顎関節の症状を見過ごしてしまうことは、将来的な症状の進行を見逃してしまうリスクにつながりかねません。

 しかし、早い段階で噛み合わせと顎関節の状態を確認しておくことで、症状の進行を防げる可能性があります。

 NICO矯正歯科では、顎関節症の症状と歯並び・噛み合わせとの関連について、丁寧に検査とご説明を行います。「音が鳴る程度だから」と迷っている場合こそ、一度、噛み合わせの状態を確認してみることをおすすめします。

よくあるご質問(FAQ)

Q1:口を開けるとカクッと音が鳴りますが、痛みはありません。それでも受診すべきですか?

A1:痛みがない場合でも、一度状態を確認しておくことをおすすめします。 音だけの段階であっても、噛み合わせのズレが背景にある可能性があります。 進行する前に現在の状態を把握しておくことで、その後の変化にも気づきやすくなります。

Q2:矯正治療をすれば、顎関節症の音や違和感は必ず改善しますか?

A2:必ず改善するとは言い切れません。噛み合わせが要因の一つである場合に、改善が期待できるとお考えください。 顎関節症は噛み合わせ以外にも、食いしばりなどの癖やストレスなど、複数の要因が関わっていることが多いとされています。 検査の結果、噛み合わせが関連していると考えられる場合に、改善の選択肢としてご提案いたします。

Q3:すでに顎関節症と診断されているのですが、その状態で矯正治療は受けられますか?

A3:状態によって対応が異なりますので、詳しい検査が必要です。 顎関節の症状が強い場合、まずは顎関節症そのものへの対応を優先し、症状が落ち着いてから矯正治療を検討することもあります。 現在の症状や治療状況を伺ったうえで、無理のない進め方をご提案いたします。