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歯肉退縮と矯正治療について

野村隆之

愛知県豊田市 NICO矯正歯科toyota
日本矯正歯科学会認定医 理事長 野村隆之

DOCTOR PROFILE

歯並びの改善は、美しい笑顔だけでなく、口腔の健康維持にも重要な役割を果たします。しかし、矯正治療を行う際には、歯肉退縮などの歯周組織への影響も考慮する必要があります。

特に年齢は、矯正治療の成功と歯肉の健康に大きな影響を与える要因の一つです。本記事では、歯肉退縮と矯正治療の関係、、治療のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

1. 歯肉退縮とは何か

歯肉退縮、一般的には「歯ぐきの後退」とも呼ばれるこの現象は、歯肉が正常な位置から下方に移動し、歯の根側が露出する状態を指します。歯肉退縮は、見た目の美しさだけでなく、歯の健康にも影響を及ぼすこともあります。歯肉が後退すると、歯根が露出し、むし歯や知覚過敏のリスクが高まります。

歯肉退縮の主な原因としては、歯磨きの習慣、歯ぎしり、歯列の不正、喫煙、遺伝的要因などが挙げられます。特に、歯列が不正な場合、特定の歯に過度な圧力がかかりやすく、歯肉が損傷しやすくなります。このため、矯正治療を検討する際には、歯肉の健康状態を十分に評価することが重要です。

2. 矯正治療と歯肉退縮の関係

矯正治療は、歯並びや咬み合わせを改善するために行われるもので、マウスピースやワイヤーを使用して歯を少しずつ動かします。矯正治療で歯並びを適正に治療をすると、ご自身でお口の中のケアがしやすい環境に整うため、歯肉の健康を促進し、歯周病のリスクを低減する効果も期待できます。しかし、矯正治療中には歯肉退縮のリスクが必ず伴います。

矯正治療中は、装置が歯茎に近い位置にあるため、細菌が溜まりやすくなります。患者さん自身のケアが不十分な場合、、歯周組織への炎症が生じ、歯肉退縮のリスクが高まります。また、矯正により歯が移動する際に、歯肉の弾力性が追いつかず、後退することもあります。そのため、矯正治療を行う際には、定期的な歯科検診と丁寧な口腔ケアが不可欠です。 さらに、患者さんの年齢も矯正治療と歯肉退縮の関係に影響を与えます。成長期にあるお子さまの場合、歯茎や骨の成長が柔軟であるため、適切な時期に矯正治療を行うことで、歯並びの改善と歯肉の健康維持を同時に実現できます。しかし、成人の場合、歯肉や骨の成長が完了しているため、治療中の歯肉退縮に対してより注意が必要です。

3. 矯正治療に適した年齢

矯正治療に年齢制限はありません。

ただし、お子さまのうちから矯正治療を行うことができれば、顎の骨がまだ柔軟で成長しているため、歯列の不正を効果的に矯正することが可能です。また、成長期に矯正を行うことで、歯肉や歯周組織への負担を最小限に抑えることができます。 お子さまの矯正治療は、早期発見と早期治療が鍵となります。矯正を早めに開始することで、後々の大掛かりな矯正を避けることができ、治療期間も短縮できます。また、成長期に合わせた適切な治療計画を立てることで、歯肉退縮のリスクを低減し、健康的な口腔環境を維持することができます。 一方、成人の場合でも矯正治療は十分に可能ですが、歯肉退縮のリスクや治療後の維持が重要となります。成人は歯肉や骨の柔軟性が低いため、歯の移動が緩やかになり、治療期間が長くなることがあります。また、既に歯肉退縮が進行している場合、治療前に歯周病の治療や歯肉の再生治療が必要となることもあります。したがって、成人での矯正治療を検討する際には、歯肉の健康状態を詳しく評価し、適切な治療計画を立てることが重要です。

4. 矯正治療のメリットとデメリット

メリット

1. 美しい笑顔の実現: 歯並びが整うことで、見た目の美しさが向上し、自信を持って笑顔を見せることができます。

2. 咬み合わせの改善: 正しい咬み合わせは、食事時の噛む力を均等に分散させ、歯や顎の負担を軽減します。

3. 口腔衛生の向上: 歯並びが整うことで、歯磨きがしやすくなり、むし歯や歯周病の予防につながります。

4. 発音の改善: 歯列のバランスが整うことで、一部の発音障害が改善されることがあります。

5. 心理的メリット: 見た目の改善は、自己肯定感の向上や社会的な自信につながります。

デメリット

1. 治療期間の長さ: 矯正治療は数ヶ月から数年にわたることが多く、継続的な通院が必要です。

2. 費用の負担: 治療費用が高額になる場合があり、経済的な負担が生じることがあります。

3. 痛みや不快感: 矯正器具による痛みや、不快感を感じることがあります。

4. 歯肉退縮のリスク: 歯肉退縮が発生するリスクがあります。

5. 食事制限: 矯正器具を装着することで、特定の食べ物を避ける必要が出てくることがあります。 矯正治療を検討する際には、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、自身の状況や目的に合わせた最適な治療方法を選択することが重要です。治療の成功には、患者さん自身の協力と歯科医師との連携が不可欠です。

5. 歯肉退縮を防ぐためのケア方法

矯正治療中は、歯肉退縮を防ぐために特別なケアが必要です。以下に、効果的なケア方法を紹介します。

1. 正しい歯磨き: 矯正器具が装着されていると、歯磨きが難しくなるため、フロスや歯間ブラシを使用して、食べかすや歯垢をしっかりと除去することが重要です。

2. 定期的な歯科検診: 矯正治療中は、定期的に歯科医院を訪れ、口腔内の状態をチェックしてもらうことで、早期に問題を発見し対処することができます。 3. 適切な食生活: 柔らかい食べ物を選ぶことで、矯正器具への負担を軽減し、歯肉への刺激を減らすことができます。

4. 専門的な歯肉ケア: 歯肉退縮が進行している場合は、歯周専門医による治療や、歯肉再生術などの専門的なケアが必要となることがあります。 これらのケア方法を実践することで、矯正治療中の歯肉退縮を効果的に防ぐことができます。患者さん自身が積極的に口腔ケアに取り組むことも、健康な歯肉と美しい歯並びの維持に大切な条件となります。

6.まとめ

歯肉退縮と矯正治療の関係は、患者さんの年齢や口腔内の健康状態によって大きく左右されます。矯正治療は、歯並びの改善と、矯正治療後の歯肉の健康維持を同時に実現することが可能です。矯正治療には多くのメリットがありますが、歯肉退縮などのリスクも存在します。適切な治療計画と丁寧な口腔ケアを行うことで、これらのリスクを最小限に抑え、健康で美しい口元を手に入れることができます。歯肉退縮や矯正治療について不安や疑問がある方は、ぜひ専門の歯科医師に相談し、最適な治療方法を一緒に考えていきましょう。