非常に興味深く、かつ歯科医師として皆様に強くお伝えしなければならないニュースが報道されました。それは「若年層における舌がんの急増」についてです。 「がんは高齢者の病気」「お酒やタバコをやる人がなるもの」というイメージを持たれている方は多いと思います。
しかし今、そうした習慣が全くない若い世代、特に女性にも舌がんが増えているのです。その原因の一つとして指摘されているのが、現代人特有の「歯並び」の問題です。
今回は、このニュースを掘り下げつつ、矯正歯科医の立場から「なぜ歯並びが悪いとがんのリスクになるのか」、そして「命を守るために私たちができることは何か」について、詳しく、分かりやすく解説していきます。
出典:https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tut/2374210
目次
1. 50年で10倍に急増!お酒もタバコも嗜まない若者を襲う「舌がん」の正体
まず、私たちが直面している現状についてお話しします。国立がん研究センターのデータによると、舌がんを含む口腔がんの患者数は、1975年からの約50年間でなんと10倍にも増加しています。かつて、口腔外科の教科書には「口腔がんは中高年の男性に多く、主な原因は長期にわたる喫煙と過度な飲酒、そして不衛生な口腔環境である」と記されていました。
しかし、現代ではその常識が覆されつつあります。お酒を一滴も飲まず、タバコも吸わず、毎日きれいに歯磨きをしている20代や30代の若者、そして女性に舌がんが発症するケースが増えているのです。
なぜ、健康的な生活を送っているはずの人々ががんになってしまうのでしょうか。そこで注目されているのが「慢性的な物理的刺激」です。これは、口の中の特定の場所が、常に何かに当たり続け、傷つけられている状態を指します。
ニュース記事でも紹介されていましたが、東京歯科大学の研究チームの論文によれば、若年者の舌がんにおいて、原因となる歯がハッキリと特定できるケースが9割にも上ると報告されています。 これはどういうことかと言うと、サイズの合わない靴を履いて歩き続けると「靴擦れ」ができるのと同じ現象が、口の中で起きているのです。
靴擦れも、最初はただの痛みですが、何年も同じ場所が擦れ続けると、皮膚が厚く硬くなり、タコになりますよね。口の中の粘膜は皮膚よりもデリケートです。鋭利な歯の角や、内側に傾いた歯が、会話や食事のたびに舌の同じ場所を攻撃し続けることによって、細胞の修復エラーが起き、それが最終的に「がん化」してしまうと考えられています。現代人特有の顎の小ささと、それに伴う歯並びの変化が、この物理的刺激を生み出す温床となっているのです。
2. 「ただの口内炎」と放置は危険!命に関わるサインを見逃さないためのセルフチェック法
「舌が痛いけれど、また口内炎だろう」「疲れているから出来ただけだ」と軽く考えてしまうことは誰にでもあります。しかし、舌がんの初期症状は口内炎と非常に似通っており、専門家でないと見分けるのが難しい場合があります。
だからこそ、患者さんご自身が「危険なサイン」を知っておくことが、早期発見・早期治療の鍵となります。ここでは、一般的な口内炎(アフタ性口内炎)と舌がんの違いについて、具体的に解説します。
まず最も重要な指標は「治るまでの期間」です。通常の口内炎であれば、ビタミン剤を飲んだり軟膏を塗ったりすれば、長くても2週間程度で炎症が治まり、痛みも引いていきます。しかし、もし2週間以上経っても治らない、あるいは一度治ったと思ってもすぐに同じ場所に再発する場合は、単なる口内炎ではない可能性が高いです。
次に「しこりの有無」です。口内炎は表面がただれているだけですが、舌がんの場合、患部を指でつまむように触ると、表面の下にコリコリとした硬いしこり(硬結)を感じることがあります。これはがん細胞が増殖して組織が硬くなっているサインです。 また、「境界線」にも注目してください。口内炎は赤くはっきりとした境界線を持っていますが、舌がんは正常な粘膜との境目が曖昧で、じわじわと広がっているように見えます。 そして恐ろしいのが「痛みのなさ」です。
口内炎は初期から強い接触痛がありますが、舌がんの初期は痛みを伴わないことが多く、「痛くないから大丈夫」と放置してしまう原因になります。進行すると、痛みだけでなく、出血や強い口臭、舌の動かしにくさ、飲み込みにくさが出てきます。舌の「側面(横の縁)」はがんができやすい好発部位ですので、鏡で舌を横に出してチェックする習慣をつけましょう。
3. なぜ現代人の「狭い歯並び」ががんの引き金になるのか?その物理的メカニズム
なぜ、現代人の歯並びは舌がんのリスクを高めるほどに変化してしまったのでしょうか。その背景には、私たちの食生活と顎の成長の深い関係があります。 本来、人間の顎は、硬いものをしっかり噛むことで発達し、大きく緩やかなU字型(馬蹄形)のアーチを描くのが理想的です。
しかし、現代の食事はハンバーグやパスタ、パンなど、あまり噛まなくても飲み込める柔らかいものが中心です。このため、顎の骨が十分に成長せず、歯が並ぶための土台が小さくなってしまいました。その結果、歯列のアーチが狭く尖ったV字型になり、個々の歯が並びきらずに内側へ倒れ込んだり、ガタガタに重なったりするようになったのです。
ここに「舌」の問題が加わります。舌は筋肉の塊であり、本来の大きさは昔も今も変わりません。つまり、「狭くなった部屋(歯並び)」の中に、「変わらない大きさの住人(舌)」が無理やり入っている状態になっているのです。
特に問題となるのが、奥歯や犬歯が内側に傾いているケース(舌側傾斜)です。歯並びが狭いために舌の居場所(舌房)が確保できず、舌は常に窮屈な状態で過ごすことになります。会話をしたり食事をしたりして舌が動くたびに、内側に倒れた歯の角や尖った部分に舌の側面が強く擦り付けられます。ご自身では「これが普通だ」と思って慣れてしまっていることが多いのですが、粘膜にとっては毎日何千回と繰り返される「微細な暴力」です。
また、口呼吸の習慣がある方も要注意です。口が開いていると舌の位置が下がり、上顎を内側から支える力がなくなるため、さらに歯列の幅が狭くなってしまいます。このように、「狭い歯並び」と「逃げ場のない舌」の組み合わせが、慢性的な刺激を生み出し、がんのリスクを高める構造的な要因となっているのです。
4. 矯正治療は見た目だけじゃない!物理的刺激を取り除き「がん」を防ぐ予防医療
ここで、私たち矯正歯科医が提案できる根本的な解決策が「矯正治療」です。多くの方は、矯正治療を「見た目を美しくするための美容的な治療」と捉えているかもしれません。もちろん審美的な改善も重要ですが、医学的な観点から見れば、矯正治療は「将来の病気を防ぐための予防医療」としての側面を強く持っています。特に今回のような舌がんのリスクに関しては、原因となっている「物理的刺激」を排除するための最も有効な手段の一つと言えます。
具体的には、内側に倒れ込んで舌を攻撃している歯を正しい角度に起こし、まっすぐに並べ直します。また、狭くなっている歯列のアーチを横に広げる(側方拡大)ことで、舌がゆったりと収まるスペース(舌房)を確保します。 ニュース記事の中で安藤先生が指摘されていたように、舌への刺激をなくすために「健康な歯を削って丸める」という処置もありますが、これには抵抗を感じる歯科医師も多く、また削っても歯の位置自体が変わるわけではないため、根本的な解決にならないこともあります。
一方で矯正治療は、ご自身の歯を削ることなく(あるいは最小限の処置で)、歯の位置そのものを移動させ、舌にとって安全で快適な環境を作り出すことができます。 実際に当院で治療を受けた患者さんからは、「歯並びがきれいになった」という喜びの声に加え、「舌が楽になった」「口の中が広くなった気がする」「滑舌が良くなり、喋りやすくなった」という機能的な変化に驚く感想をよくいただきます。
これは、舌への慢性的な圧迫や刺激がなくなった証拠です。矯正治療によって得られる「正しい噛み合わせ」と「広い口腔内スペース」は、舌がん予防だけでなく、呼吸の改善や消化機能の向上など、全身の健康に寄与する一生の財産となります。
5. 治療の前に知っておきたい!矯正の期間・費用・メリットとデメリットの徹底比較
矯正治療がいかに有効かが分かっても、実際の治療に踏み切るには不安があると思います。ここでは、治療を検討する上で避けては通れない、期間や費用、メリット・デメリットについて、包み隠さずお話しします。
【治療方法の選択】 大きく分けて、歯に器具を接着する「ワイヤー矯正」と、透明なマウスピースを交換していく「マウスピース型矯正装置(インビザライン等)」があります。 舌がん予防の観点から見ると、ワイヤー矯正の裏側装置(リンガルブラケット)は舌に当たりやすいため、表側のワイヤー矯正か、あるいは装置が滑らかで舌への刺激が極めて少ないマウスピース型矯正装置が推奨されることが多いです。
【治療期間と費用】 大人の全体矯正の場合、期間は平均して2年〜3年程度かかります。費用は原則として健康保険が適用されない自費診療となり、医院や地域にもよりますが80万円〜120万円程度が相場です。これは決して安い金額ではありません。しかし、デンタルローンなどを利用して月々の支払いを1万円〜2万円程度に抑えることも可能です。
【メリットとデメリットの比較】
- 身体的メリット: 舌への物理的刺激がなくなり、がんのリスクが低減します。噛み合わせが整うことで、特定の歯への負担が減り、歯の寿命が延びます。また、歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病の予防にもなります。
- 精神的メリット: コンプレックスが解消され、笑顔に自信が持てます。「がんになるかもしれない」という将来の不安から解放されます。
- デメリット: 治療中は歯が動く痛みや違和感があります(通常数日で慣れます)。また、長期間の通院と、治療後の保定(後戻り防止)への協力が必要です。経済的な負担も大きな要素です。
しかし、考えてみてください。もし将来、舌がんになってしまった場合、手術や入院にかかる費用、仕事を休むことによる経済的損失、そして何より「舌の一部を失うかもしれない」という身体的・精神的な苦痛は計り知れません。それと比較すれば、2〜3年の期間と費用をかけて、健康で美しい口元を手に入れることは、非常にコストパフォーマンスの高い「未来への投資」であると、私は確信しています。
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6. まとめ お口の違和感は身体からのSOS。専門家と共に守る未来の健康
今回は、若年層に増えている舌がんと歯並びの関係について詳しく解説しました。 「お酒も飲まない、タバコも吸わないから大丈夫」という過信は禁物です。もしあなたが、日常的に「舌の横に歯が当たっている気がする」「口内炎が同じ場所にできて治りにくい」「舌にしこりのような硬さを感じる」といった症状を感じているならば、それは身体からのSOSかもしれません。決して放置せず、できるだけ早く口腔外科や、私たちのような矯正歯科医にご相談ください。
特に、愛知県刈谷市のNICO矯正歯科では、単に歯を並べるだけでなく、患者様一人ひとりの舌の大きさや癖、顎の形を総合的に診断し、将来の健康リスクまで考慮した治療計画をご提案しています。「私の歯並びは大丈夫かな?」と不安に思ったその時が、受診のタイミングです。 歯並びを整えることは、見た目を美しくするだけでなく、あなたの大切な命を守ることに繋がっています。私たちと一緒に、健やかで安心できる未来を作っていきましょう。
当院の症例はこちらです→https://nico-ortho-toyota.com/case